◆発表のポイント
- 岡山大学と理化学研究所が参加した国際研究グループは、最新の塩基解読法および整列技術によって20品種のオオムギにおける染色体単位のゲノム配列解析に成功しました。
- 品種間で遺伝子領域配列の63%が共通で、残りの37%は異なることがわかりました。
- 本成果によりオオムギのデジタル育種が進み、品種をデザインする技術の開発が期待されます。
岡山大学資源植物科学研究所(IPSR)の佐藤和広教授、平山隆志教授、理化学研究所環境資源科学研究センターの持田恵一チームリーダー(岡山大学資源植物科学研究所特任教授)らの共同研究グループは、2万種類以上のオオムギから、ゲノムの部分配列による遺伝子鑑定で選んだ20品種を、最新の塩基解読法および整列技術で個別に解読し、世界中のオオムギに含まれるDNA配列の大要を明らかにしました。
オオムギは7対の染色体を持ち、そのゲノム配列は約50億塩基対と巨大で、ヒトの1.7倍、イネの13倍もあります。オオムギでは、これまで単一の品種の精密な塩基配列を基に、別な品種の配列を重ねることで、遺伝子同定や遺伝子鑑定技術の開発をしていました。しかし、この方法では、目的とする品種の遺伝子配列が元の品種になければ、解析することは困難でした。
このため、本研究グループは20種類の野生および栽培オオムギを個別に高精度解読して、オオムギのDNA配列の大要を得る「パンゲノム(Pan
Genome)」解析を行いました。その結果、品種間で遺伝子領域配列の63%が共通で、残りの37%は異なることがわかりました。また、この解析から、過去の育種の過程で起きたゲノム構造の逆位を確認しました。
この研究成果は、イギリス時間11月25日16:00(日本時間26日1:00)に英国科学雑誌「Nature」オンライン版に掲載されました。
本研究での複数品種の高精度解読によって、有用形質に関わる遺伝子の解析や育種への応用が可能となるほか、本研究の進展によって、オオムギのデジタル育種が可能となり、目的とする品種をデザインする技術の開発が期待されます。
■論文情報論 文 名:The barley pan-genome reveals the hidden legacy of mutation breeding
邦文題名「オオムギのパンゲノムは育種の隠れた過去の出来事を明らかにする」
掲 載 紙:Nature著 者:Murukarthick
Jayakodi, Sudharsan Padmarasu, Georg Haberer, Venkata Suresh Bonthala,
Heidrun Gundlach, Cécile Monat, Thomas Lux, Nadia Kamal, Daniel Lang,
Axel Himmelbach, Jennifer Ens, Xiao-Qi Zhang, Tefera T. Angessa, Gaofeng
Zhou, Cong Tan, Camilla Hill, Penghao Wang, Miriam Schreiber, Lori B.
Boston, Christopher Plott, Jerry Jenkins, Yu Guo, Anne Fiebig, Hikmet
Budak, Dongdong Xu, Jing Zhang, Chunchao Wang, Jane Grimwood, Jeremy
Schmutz, Ganggang Guo, Guoping Zhang, Keiichi Mochida, Takashi Hirayama,
Kazuhiro Sato, Kenneth J. Chalmers, Peter Langridge, Robbie Waugh,
Curtis J. Pozniak, Uwe Scholz, Klaus F. X. Mayer, Manuel Spannag,
Chengdao Li, Martin Mascher, Nils SteinD O I:https://doi.org/10.1038/s41586-020-2947-8
<詳しい研究内容について>
オオムギ遺伝資源のゲノム多様性を解明-オオムギのデジタル育種の実現が期待-
<お問い合わせ>
岡山大学 資源植物科学研究所 教授 佐藤和広
(電話番号)086-434-1244
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id787.html
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