◆発表のポイント
- ヒトの口腔がんにおいて、がん周囲に存在するがん間質が口腔がんの性格を制御している新たな仕組みを発見しました。
- 口腔がん手術時の外科的安全切除設定範囲の新たな基準となることが期待されます。
- 新たな抗腫瘍治療薬の開発など、口腔がんの新規治療法確立が期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)の長塚仁教授、高畠清文助教らの研究グループは、通常口腔がんの手助けをするはずの腫瘍間質が口腔がんの悪性度や浸潤などの性格を制御していることを見出しました。この研究成果は10月18日、スイスの学術誌「International Journal of Molecular Sciences」のResearch Articleとして掲載されました。
口腔がんは正常細胞を手懐けて、免疫や制癌剤から自分を守らせたり、増殖をサポートさせたり、転移の手助けをさせる腫瘍間質と呼ばれる組織を周囲に配置させています。がん細胞は自分の都合のいいように腫瘍間質の性格を変化させ、生体内に浸潤することはすでに知られています。しかし、今回の研究では、がん細胞が手懐けた腫瘍間質ががん細胞へ影響を及ぼし、がんの悪性度や浸潤能を変化させることを発見しました。そのため、口腔がんの手術はがん細胞のみを切除すればいいのではなく、腫瘍間質を含めて切除しなくていはいけません。
本研究成果は、口腔がんの再発を未然に防ぐ可能性だけでなく、がん化のメカニズム解明の重要な起点となることが期待されます。
◆研究者からのひとこと
口腔がんはがん細胞とがん細胞を支える腫瘍間質から構成されています。通常がん細胞が腫瘍間質をコントロールしてがんの進展に関与していると考えられています。しかし、今回の研究では、がん細胞が手懐けている腫瘍間質が実はがん細胞の性格をコントロールしている可能性が示唆されました。これは今までの腫瘍学にはない概念であり、口腔がんの新しい手術切除範囲の決定の基準を提案できる可能性が出てきました。患者さんに役に立つ治療法につなげるよう、今後とも頑張ります。 | 高畠清文助教 |
■論文情報
論 文 名:Impact of the stroma on the biological characteristics of the parenchyma in oral squamous cell carcinoma
掲 載 紙:International Journal of Molecular Sciences
著 者:Takabatake K, Kawai H, Omori H, Shan Q, May WO, Sukegawa S, Nakano K, Tsujigiwa H, Nagatsuka H*.
D O I:10.3390/ijms21207741
U R L:https://www.mdpi.com/1422-0067/21/20/7714S
<詳しい研究内容について>
口腔がんの性格を制御する新たな仕組みを発見!~腫瘍切除の新たな基準となる可能性~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
教授 長塚 仁
(電話番号)086-235-6650
(FAX)086-235-6654
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(歯)
助教 高畠清文
(電話番号)086-235-6651
(FAX)086-235-6654
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id784.html
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