◆発表のポイント
- 拡張型心筋症ブタモデルの作成法を確立し、40頭に対して心臓内幹細胞を冠動脈内に投与することで、細胞移植に関する技術的安全性と治療有効性を確認しました。
- 5症例の小児拡張型心筋症に対して自家幹細胞を移植し、臨床上での安全性を確立しました。
- 移植する幹細胞から分泌される細胞外小胞が心臓内での抗炎症作用を発揮し、組織線維化を抑制することで心臓機能が回復することを見出しました。
岡山大学病院新医療研究開発センター再生医療部の王英正教授と同大学病院小児科の平井健太医師らは、拡張型心筋症ブタモデルならびに小児拡張型心筋症症例に対して、心臓内幹細胞を移植することで、心不全に陥った心臓機能が回復することを見出しました。特に、移植する細胞内から分泌される細胞外小胞のうち、miR-146a-5pというマイクロRNAが抗炎症作用を直接働かせることで、障害を受けた心臓組織が線維化することを防ぎ、かつ、治療効果の予測法にもつながることを明らかにしました。これらの研究成果は、米国東部標準時間12月9日14時(日本時間10日4時)、米国科学誌「Science Translational Medicine」の Research Article として掲載されました。
重篤な小児拡張型心筋症は日本国内での心臓移植適応症例の約75%以上を占め、臓器提供者不足が深刻な我が国では、革新的な治療法の開発と早期の臨床実用化が強く望まれております。本研究成果により、保険適応を目指した第2相治験への発展が期待されます。
◆研究者からのひとこと
心臓移植を必要とする小児拡張型心筋症で苦しむ患者さんに向けて、新たな治療法を提供できるよう、今後は臨床実用化のための治験を進めていく予定です。 | 王英正教授 |
王英正教授をはじめ、ご指導いただいた諸先生方に深謝いたします。今後も基礎と臨床をつなぐ研究を続けていきたいです。 | 平井健太医師 |
■論文情報
論 文 名:Cardiosphere-derived exosomal microRNAs for myocardial repair in pediatric dilated cardiomyopathy
邦題名「心臓内幹細胞由来の細胞外小胞による小児拡張型心筋症の組織修復」
掲 載 紙:Science Translational Medicine
著
者:Kenta Hirai, Daiki Ousaka, Yosuke Fukushima, Maiko Kondo, Takahiro
Eitoku, Yusuke Shigemitsu, Mayuko Hara, Kenji Baba, Tatsuo Iwasaki,
Shingo Kasahara, Shinichi Ohtsuki, Hidemasa Oh
D O I:10.1126/scitranslmed.abb3336
<詳しい研究内容について>
小児拡張型心筋症に対する細胞治療法の仕組みを解明~臨床研究で安全性確認にも成功~
<お問い合わせ>
岡山大学病院 新医療研究開発センター再生医療部
教授 王 英正
(電話番号)086-235-6506 (FAX)086-235-6505
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