◆発表のポイント
- 血液を『ふるい』にかけ、必要なタンパク質をこしとる装置に必要な鍵タンパク・ダイナミン1を発見しました。
- ダイナミン1は、腎臓糸球体上皮細胞(ポドサイト)がつくる『ふるい』の骨組み(微小管)を束ね『ふるい』機能をサポートします。
- ダイナミン1をターゲットに、『ろ過』細胞の機能を保ち、タンパク尿の進行や慢性腎臓病注3の進行を抑止できる可能性があります。また、腎臓病の発症機序やその新規治療法への応用が期待されます。
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科(医)生化学分野の山田浩司准教授、竹居孝二教授らのグループは、腎臓においてタンパク尿を防ぐ“血液ろ過”細胞に重要なタンパク質「ダイナミン1」を発見しました。
研究成果は、米国科学雑誌「The FASEB Journal;ファセブジャーナル12月号:2020年11月24日」に掲載され、本論文が12月号の表紙に選ばれました。
腎臓は、血液をろ過し、タンパク質を体内に留め、不要な水分や老廃物を尿として体外へ排泄する器官です。血液ろ過は腎臓の糸球体で行われ、糸球体の血管の周りをまんべんなく覆うポドサイトが『ふるい』の役割をします。ポドサイトは突起を多数もち、隣のポドサイトの突起とジッパー状の噛み合わせをつくり、タンパク質など大きな分子を漏らさないようにしています。糖尿病や高血圧などにより、ポドサイトが傷ついて萎縮、脱落すると『ふるい』が壊れ、タンパク質が漏れ出てタンパク尿が発生します。タンパク尿の進行は慢性腎不全の進行につながるため、いかに、ポドサイトを安定させてタンパク尿をおさえるかが治療のカギとなります。
私たちの発見したダイナミン1をターゲットに、腎臓での血液ろ過機能の低下を防ぎ、タンパク尿の進行や慢性腎臓病の進行を抑止できる可能性があります。また、腎臓病の発症機序やその新規治療法への応用が期待されます。
◆研究者からのひとこと
タンパク尿の進行は、慢性腎不全の進行につながります。本研究の結果から血液の『ふるい』機能を長く維持できるような創薬、治療法の開発を目指し、いち早く患者さんに役に立つような研究ができるように頑張ります。 | 山田浩司准教授 |
ポドサイトはユニークな形をした細胞ですが、ポドサイトがろ過細胞として働くためにはその形態が不可欠です。どのようにしてあの芸術的なカタチが造られるのか、今後解き明かして行きたいと思います。 | 竹居孝二教授 |
図1:腎臓で血液の『ふるい』によって、タンパク尿が防止される仕組み
■論文情報
論 文 名:Dynamin 1 is important for microtubule organization and stabilization in glomerular podocyte
邦題名「ダイナミン1は、腎臓糸球体ポドサイトでの微小管の配向と安定化に重要である」
掲 載 紙:The FASEB Journal
著
者:The Mon La, Hiromi Tachibana, Shun-Ai Li, Tadashi Abe, Sayaka
Seiriki, Hikaru Nagaoka, Eizo Takashima, Tetsuya Takeda, Daisuke Ogawa,
Shin-Ichi Makino, Katsuhiko Asanuma, Masami Watanabe, Xuefei Tian, Shuta
Ishibe, Ayuko Sakane, Takuya Sasaki, Jun Wada, Kohji Takei, Hiroshi
Yamada
D O I:10.1096/fj.202001240RR
<詳しい研究内容について>
タンパク尿を防ぐ!“血液ろ過”細胞のしくみを解明~新規の腎臓病治療の標的タンパクの可能性~
<お問い合わせ>
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生化学分野
准教授 山田浩司
(電話番号)086-235-7125
(FAX)086-235-7126
岡山大学大学院医歯薬学総合研究科 生化学分野
教授 竹居孝二
(電話番号)086-235-7120
(FAX)086-235-7126
https://www.okayama-u.ac.jp/tp/release/release_id785.html
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